NYで注目集める「日本カルチャー」: パレードに6万人集客、日本発のショップや舞台も続々
新緑がまぶしいニューヨーク。暑すぎず寒すぎず1年でもっとも心地よい季節だ。街中では日本人観光客と思しき姿も心なしか増えているように感じる。そんな当地で日本に関連するイベントや新店オープンなどが続いている。近年さらに高まる日本人気を映すかのように、日本発祥の文化にまつわるニュースがこの春から夏にかけて、あちこちで話題になっている。
NYで日本がテーマの一大パレード開催
ニューヨーク・セントラルパークの西側の大通りでは5月10日の土曜日、日本文化を紹介する「Japan Parade」が催された。このパレードには110団体、約2800人もが参加し、その中には今年ニューヨークタイムズ紙に「行くべき場所」の一つとして選ばれた富山市の一行の姿もあった。「おわら風の盆」の街流しが披露され、沿道の人々は珍しそうにじっと見守っていた。どの視線にも明らかに異国の文化への敬意が感じられた。
パレードに参加した富山市の「おわら風の盆」の街流し© Kasumi Abe
パレードに特別ゲストとして参加したアイドルグループ「NMB48」元メンバーの山本彩さんや、人気アニメ『進撃の巨人』のミュージカル版のキャストが姿を見せると、歓声がさらに大きくなった。ミュージカル『進撃の巨人』は2024年10月に海外初公演となるNYブロードウェイで全4公演がチケット完売となる大成功で、キャストをひと目見ようと、沿道に日米のファンも多く詰めかけていた。
ほかにも沿道の人々からのやんやの喝采は、当地における近年の日本ブームを如実に物語る光景だった。Japan Paradeは今年で4回目。年々参加者が増えており、主催者によると今年は過去最大規模になったという。
伝統芸能や着物・武道・和太鼓といった伝統文化の団体などが次々と登場した © Kasumi Abe
ニューヨーク市警の発表では6万人以上の人出だった © Kasumi Abe
『進撃の巨人』以外にも、最近当地で上演された話題のアニメ発の舞台があった。『美少女戦士セーラームーン』だ。この作品は今年3月から約1カ月かけて北米21都市を巡業し、4月末にニューヨークで千秋楽を迎えた。ブロードウェイには多くの漫画&アニメファンが訪れ同作を楽しんだ。
ニューヨークでの『美少女戦士セーラームーン』のプレス向けイベント © Kasumi Abe
ほかにさまざまな日本発祥のカルチャー関連ニュースが続いている。
3月には、中心地の五番街で北米初の「ユニクロ コーヒー」がオープン。
さらにタイムズスクエアには『ドラゴンボール』や『ワンピース』など人気アニメのフィギュアを販売する「タマシイネイションズ(Tamashii Nations)」が出店。それほど広い店ではないが、フィギュアや関連グッズが所狭しと陳列され
タマシイネイションズにはマニアがくぎ付けになるフィギュアがぎっしり並んでいる。場所柄、世界中の観光客がやってくる © Kasumi Abe
さらに4月には日本発の生ドーナツ店「アイムドーナツ(I’m donut?)」が海外第1号店を開いた。またこの近くにはアメリカでも知らない人はいないほどの人気キャラ、サンリオのハローキティのポップアップショップが登場する予定だ。
I’m donut? のプレス向けイベント© Kasumi Abe
日米の歴史にも関心寄せる市大生
4月のある日、ニューヨーク市立大学ハンターカレッジ(Hunter College)で日系米国人の古本武司さんが特別講師として教壇に立った。
古本さんは、戦時下の1944年にカリフォルニア州の日系人強制収容所で生まれ、原爆投下直後の広島で育ち、その後、米国人としてベトナム戦争に従軍した経験を持つ。
古本さんは、学生に向かって日米2国間の歴史や平和の尊さを伝える一役を買ったのだった。この講義を聴講したのは同大で日本語や日本文化を学ぶ生徒たちだ。彼らは皆真剣な面持ちで実際に起こった悲しい歴史の話に聞き入っていた。
日系人・古本武司さんの話に聞き入るハンターカレッジの学生。次々と古本さんに質問し、関心の高さをうかがわせた © Kasumi Abe
ハンターカレッジ日本語・日本文化科科長、マーヤン・バルカンさんによると、昨年1年間で同大学の日本関連の授業を受講した学生は1300人にも上る。ここで用意されている日本関連プログラムは多彩だ。中でも日本食文化、漫画&アニメ、ビデオゲーム、テクノロジーの分野が人気だという。
このように学生が日本語を学んだり日米の歴史を知ろうとしたりするモチベーションは何だろうか。バルカンさんによると、きっかけとなっているのは漫画やアニメ、ビデオゲームなどのポップカルチャーだそうだ。「日本のドラマなどを観て、日本語を勉強したい、歴史を知りたいと思うようです」。
何気なく目にした漫画から受ける影響も大きい。漫画に描かれている花を生ける場面に興味を引かれ、「生け花を習ってみたい」と思うようになる人もいる。ポップカルチャーを入口に日本の文化に触れ、次第に伝統的なものに関心が移る人もいるそうだ。ニューヨークという土地柄、市内の至る所に日本食レストランや食材店があり、そこから次第に日本発祥の文化に興味が広がる例もある。
同大学で日本文化やサブカルチャー全般を教えるエイプリル・ゴルツケ非常勤助教授も、日本文化に傾倒する学生の最初のきっかけとして、幼少時に何気なく観たアニメからの影響は外せないと言う。「初めは何も知らずに観ていて、後で日本のものだったと知るケースも。それで次第に興味の幅が日本語、日本の文化や歴史に広がっていくのです」。
『進撃の巨人』キャストらが見る日本文化の広がり
先に紹介した「Japan Parade」に初参加した山本彩さんや、舞台版・進撃の巨人のキャストは、海外に出て日本がどのように見えたのだろうか。また日本文化は今後、世界にどのように広がってほしいと考えているだろうか(以下、記者団に向けた発言からの筆者による要約)。
「アニメや日本食など日本独自の文化は強みだと思う。実際に好きだと言ってくださる方々がたくさんいました。日本では、“オタク”はややネガティブに捉えられがちですが、海外ではすごくポジティブに捉えて、“自分はオタクである” と自信を持って言っている。日本も見習いたいところです。今後もポジティブに広がっていくとうれしい」(山本彩さん)
「アニメや漫画の文化ってものすごく強い。(その勢いが)さらに限界知らずにどんどん大きくなって世界に広がっていってほしいです。私もアニメが大好きなので!」(ハンジ・ゾエ役の立道梨緒奈さん)
「われわれは日本で生まれ、生きてきて、世界に誇ることができる文化、大和魂、侍のような心がある。世界にたくさん知ってもらい素敵だって思ってもらいたいです。そして誰かの笑顔になれたらうれしい」(リヴァイ役の松田凌さん)
「日本が誇るアニメ&漫画には日本の古き良きところや精神性が踏襲されています。情熱やストーリー力は世界に通用する大きな文化。それを舞台芸術という生の表現に落とし込んだのが舞台作の『進撃の巨人』。パレードに参加した踊り、剣道、格闘技など見た目や音の美しさに加え、精神性の美しさも組み込まれています。そこから日本人の素晴らしさが伝わり日本をもっと好きになってもらえたらと思います」(エルヴィン・スミス役の大野拓朗さん)
バナー写真:ブルックリン植物園に1915年からある日本庭園は、地元の人々の憩いの場。4月に園内で開催された花見イベント「Hanami Nights」より。© Kasumi Abe
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