スカイツリーのふもとで日本文化を世界へ発信する「片岡屏風店」:思い入れのある写真や着物をモダンなインテリアに!
Guideto Japan
1300年以上前に日本へ伝来し、 伝統工芸品となった「屏風(びょうぶ)」。時代の流れで需要が減り続けている中、都内唯一の専門店「片岡屏風店」は独自の取り組みで海外から注目を集めている。
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外国人からアートとして親しまれ始めた屏風
墨田区には伝統産業の町工場が残る。東京スカイツリーのお膝元、向島で1946年創業の「片岡屏風店」もその一つ。ホテルに紹介されたり、インターネットで見つけたりした訪日客が数多く来店する。
英語で自ら応対するのが、24年に3代目社長を継いだ片岡孝斗(こうと)さん。高校時代の米国留学で「各国から集まった友人たちが自国の文化を雄弁に語る様子を見て、屏風こそ、日本が誇れる文化だと再認識」したのを契機に、祖父と父が守ってきた家業に入った。「今ではアート感覚で屏風を部屋に飾り、日本文化を生活に取り込む外国人が増えている」とうれしそうに話す。
閑静な住宅地にある片岡屏風店。1階がショールーム、2階が工房
従業員7人を束ねる片岡社長。「職人はもちろん、屏風の魅力を広げられる人材も必要」とマンパワーの重要性を訴える
屏風は中国から伝わり、奈良時代から用いられた調度品。元々は枕元に置く風よけで、部屋の仕切りとしても重宝された。室町時代あたりからは装飾性が高まった。墨一色の濃淡で情景を描く水墨画から、金箔(きんぱく)の上に極彩色を重ねた金碧障屛画(きんぺきしょうへいが)まで、日本独自に発展した屏風絵が武家や貴族の邸宅、寺院で用いられた。絵を内側にして折り畳めるため、保存状態の良い名品が数多く残されている。
住環境の変化により、現代では日用使いされることはまれだ。そのため、今や片岡屏風店は都内唯一の専門店となった。主に節句飾りの業者向けを中心に製作してきたが、少子化や核家族化が進むにつれ、需要は減少の一途をたどっているという。
先代となる片岡さんの父は時代に対処するため、一般客からも受注を開始。結婚記念に2人の思い出のスナップをあしらったり、代々受け継いだ着物を屏風に仕立てたりと、オーダーメードに対応した。近年は個人客に加え、自治体や企業からの注文も舞い込む。
ファッションブランド向けの特注品。金箔縁の豪華な屏風がパーティション代わりに(片岡屏風店提供)
オーダーメードはデザインから相談でき、写真は複数の組み合わせも可能
片岡さんは留学時代に肌で感じた「日本文化に対する海外からの視点」を生かし、外国人の顧客開拓に力を注いでいる。対面だけでなくチャットツールも駆使して、細かな工程による仕上がりの違いなどを伝え、相談しながら制作に励む。
時には、帰国直前の訪日客が気に入った展示品を「言い値で構わないから持ち帰りたい」と買い求めることもあるそうだ。売り上げ全体の約3割を外国人客が占めており、人気の高さを裏付ける。
現代アーティストの作品を屏風に。参考展示だが、販売を希望されることもある
屏風の自由さにほれ込む外国人が増加
外国人客の発注は、松や富士山などジャポニスムを感じられるモチーフが多いという。依頼者のイメージするものをくみ、最適なサイズ・配色・木材・金具などを導き出し、完成品は国際輸送便で届けている。
工房での制作風景。依頼から完成まで3カ月かかることも珍しくない
片岡さんは「顧客と共に、他にない屏風をゼロから作り上げるのが面白い」と語る。依頼者のこだわり次第で制作費はかさんでいくが、予算に合わせて素材などを柔軟にカスタマイズし、できる限りイメージに近づけて仕上げるので、まずは気軽に相談してほしい。
2階の工房では、職人が表具に和紙を張り付ける作業にいそしんでいた。目を見張るのは、着物の生地を独自工法で「紙」へと変え、唯一無二の作品へ仕立て上げる技。和紙を霧吹きでぬらし、屏風へなじませる工程は、湿度などを考慮した豊富な経験と繊細な技術が求められる。
湿気を含んだ和紙は一時的に伸び、乾燥するとしわのない状態となる
片岡さんは海外アーティストとコラボして屏風の展覧会に携わるなど、伝統文化を世界に広める活動にも精力を傾けている。 「屏風が日本に興味を持つきっかけになればうれしい。スカイツリー観光のついでに立ち寄ってもらえれば、職人の技の素晴らしさを喜んで解説します」と歓迎する 。
ショールームは「屏風博物館」 として制作道具や歴史解説パネルを展示。実物の屏風やその文化に触れることができる
片岡屏風店
- 住所:東京都墨田区向島 1-31-6
- 定休日:土・日曜日、祝祭日は休み
- 営業時間:午前10:00~午後5:00
- アクセス:東武スカイツリー線「とうきょうスカイツリー」駅より徒歩1分、都営浅草線「本所吾妻橋」駅から徒歩8分、東京メトロ半蔵門線「押上」駅から徒歩7分
詳細は公式ホームページを参照
撮影=ニッポンドットコム編集部
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